毎日新聞札幌

10月20日、毎日札幌版に記事が出ました。
http://mainichi.jp/area/hokkaido/news/20151020ddr041040004000c.html

性同一性障害:窓口対応策定 札幌市がマニュアル 「性別確認」に批判受け
毎日新聞 2015年10月20日 北海道朝刊
身体的な性別と心理的な性別が一致せず違和感に苦しむ性同一性障害GID)を巡り、札幌市は、窓口業務の対応マニュアルを策定することを決めた。窓口での本人確認の際、本来は必要ないのに、GID当事者が性別のことを職員から口頭で聞かれるケースが相次いでおり、支援団体が「当事者の苦悩を分かっていない」と改善を求めていた。【日下部元美】
市内に住むGIDの女性(46)=戸籍上は男性=は今年9月、性別記載が不要な印鑑登録を申請した際、窓口の男性職員に「本人ですか?」「男性ですよね?」などと何度も聞かれた。
この女性は幼少期から性に違和感を感じ、2010年から会社でも女性として働いている。12年にGIDと診断された。性転換手術を行っていないことなどから、戸籍の性別変更はできないが、いつも女性用の服を着ているという。女性は「大きな声で性別を確認され、周囲の反応が気になってしまった。違和感に苦しむGID当事者の気持ちを理解してほしい」と話す。
札幌市は04年、戸籍の性別変更を認める「性同一性障害特例法」の施行に合わせ、転入・転居届▽転出届▽住民票等証明請求書▽印鑑登録証明書などで性別記載を廃止し、これらの手続きの際には性別の確認をする必要がないことを関係部署に通知した。関係者によると、通知から約10年がたち、職員の間でその趣旨が十分に理解されないまま、GID当事者に不必要な性別確認をしてしまうことが増えてきたという。
札幌市の支援団体「WithUs」(日野由美代表)は今年6月と9月、「当事者は自身の性別に多大な違和感と不利益を感じている。一部の職員は性別欄削除を実現した考え方を忘れている」などと改善を要請した。
事態を受け、市はGID当事者への対応方法などを盛り込んだマニュアルを作成し、来年度から戸籍住民課の研修で使用する。性別記載を廃止した経緯や目的なども研修で説明する方針だ。
戸籍住民課の水野栄二係長は「個人情報保護のために本人確認を厳格化する中で起きてしまった。当事者を傷付けたことは事実で、今後はそのようなことがないよう研修で指導したい」と話している。
GID問題に詳しい札幌弁護士会の加藤丈晴弁護士は「本人確認は誕生日や住所など性別以外でもできる。多様な性に対する意識改革が必要だ」と指摘している。